ちょこっと感動日記

毎日のちょっとした熱~い感動を綴るマイブーム日記。音楽、本、マラソン、映画、サッカーのこと あれこれ!

フロベール<三つの物語>を読んで!


 作家 宮本輝さんが 青春時代に読んだ名作32冊を 紹介しているエッセイ<本をつんだ小舟>という本を読んでいて その中で紹介されていたフロベール 『三つの物語(Trois Contes)』を 図書館で 借りてきて 読んでみることにしました。


 本自体は とっくの昔に 絶版になっているらしく ボロボロになっていて おまけに今では 使われていない漢字や 旧かな使いで 読むのに 時間がかかりましたが なんとなく理解し 読み終えました。なんせ 1877年に発表され 1940年に 日本で発売されたものなのですね!


この借りてきた岩波文庫版では 3つの物語のタイトルは <まごころ>、<聖ジュリアン傳>、<ヘロジアス>とありますが 訳し方によっては 変わってくるようです。


 その中で <聖ジュリアン傳>は 比較的わかりやすい物語だったかもしれませんが すごく魅かれました。



<聖ジュリアン伝>は 中世の聖人伝説で 生まれつき持っていた異常な行動が 身を滅ばせてしまう話です。


ある豊かで小さな王国で ジュリアン王子が誕生します。父も母も家来も 将来を楽しみに育てられます。心ややさしく すくすくと育っていきますが ちょっとしたきっかけで小動物を 殺してしまいます。その死んでいく様を観て 不思議な歓びを 感じてしまいます。


ある年齢に達し 狩りに出かけるようになったとき 異常に熱中するようになります。そして 次々に殺していくようになります。


そして ある日 子鹿を連れた父鹿と母鹿に出会います。そこで ためらわずに 子鹿に弓を撃って殺してしまいます。そして 悲痛な声で鳴いた母鹿も 殺してしまいます。父鹿が襲ってきたので 矢を射って命中します。けれども 倒れず 人間の言葉で しゃべったのです。


「呪われてあれ!呪われてあれ!呪われてあれ!」
「残忍なるものよ、いつの日か、自分の父母を 殺すことになるぞ!」
そう言って 静かに死んでいきました。


それ以来 城から出て 野武士になり いつしか 大軍の対象となりました。そして ある皇帝を助けたことで 娘を差し出され 妻とし 平穏な日々が 続くようになります。


そこに 年老いた父母が 探しにきます。ちょうど その時に その場に居なかったので妻は ジュリアンのベットで 二人を 休ませます。そこに帰ったきた ジュリアンは 妻が男と寝ていると思いこみ 短刀で 刺殺してしまいます。本当に 殺してしまうことになってしまったのですね!


その後 城も妻も捨て どれほど多くの生き物を殺し 父母まで殺してしまったことを 告白して歩きますが 誰も相手にしてくれません。


ところが どこからか 自分を呼ぶ声がします。行くと 全身 悪性の皮膚病の老人が 耐えがたい悪臭を放って 臭い息を吐きながら言いました。「腹がへった」 ジュリアンは 持っているだけの食料を与えました。そして 老人は 寒さを訴え 自分の膿だらけの体を ジュリアンの体で 温めてくれと言います。ジュリアンは 裸になって 老人の体に ぴったりと 押し付けました。すると 老人はジュリアンを 抱きしめました。老人の体は光り始め 悪臭は消え それとともに ジュリアンの胸に あふれんばかりの歓喜が湧き上がり 輝く慈愛の男に変身した老人に抱かれたまま 天に運ばれていきました。


小説の最後は 
「以上が 私の故郷の教会の焼き絵ガラスに描かれてある 慈悲深い聖ジュリアンのあらましである」
という言葉で 終わっています。



読み終わって 少し考えました。


果たして ジュリアンは 聖人なのか?罪人なのか?



この小説は 慈悲とか懺悔とかの 宗教的な意味合いは あまり感じなくて 一人の人間の罪と父母の関係は、多分 人間の意志を超えた部分の 奥深い秘密が あるような気がしてきます。最後の場面は ディズニー映画でもあった「美女と野獣」の 最後に 魔法が解けて 野獣が 王子の姿に戻る場面を 思い出させてくれ 興味深々です。人間の奥底の部分での 戒めかもしれません。そんなことを思った 不思議な話でした。


神話風の話は こういった 後で 読んだ人に 考えさすみたいな話が 数多くあり 面白いですね! 


最後まで ありがとうございました!  


楽しい時間を! 



 


フロベール 『三つの物語』 山田九朗訳、岩波文庫、1940年





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