ちょこっと感動日記

毎日のちょっとした熱~い感動を綴るマイブーム日記。音楽、本、マラソン、映画、サッカーのこと あれこれ!

宮本輝『にぎやかな天地』を読んで!


 大好きな作家のひとりである宮本輝さんの作品『にぎやかな天地』を 図書館で 借りてきて 久しぶりに 読んでみました。輝さんとは 私が 23歳の時 私の親父から 薦められた短編集『幻の光』から 始まって 約30年の付き合いです。私にとって 宮本さんの作品は 常に 生きることへの勇気を 与えてくれ、人として こうあるべきだ ということが 楽しく教えてくれ 人間勉強の小説と言ってもいいくらいで いきいきと 人間が描かれているのも魅力です。


 20歳代の頃に 輝さんの作品ばかり 読んでいた時期があり 講演会にも 2回 足を運んだほどの はまりようでした。その頃 読んだ一冊に 輝さんが 影響を受けた32作品の名作小説を 紹介するエッセー『本をつんだ小舟』があり より感化され そのうちの半分くらいの小説も 読破したりしました。サマセット・モーム『雨』、大岡昇平『野火』、ツルゲーネフ『初恋』、水上勉『飢餓海峡』、カミュ『異邦人』、チューコフ『恋について』、ドストエフスキー『貧しき人々』、宇野千代『おはん』、そして 井上靖『あすなろ物語』、、、、今でも 印象に残っている 私にとっても 大好きな小説群です。


 私の 面白いか 面白くないか の判断基準は たぶん 輝さんの判断基準から 少なからず影響を受けていると思っております。名作が持つ力強さに 憧れてしまうのも 小説とは こんなにも 生きる勇気を 与えてくれる素晴らしいものなのか と もし輝さんに めぐり合えていなかったら 分からなかったような気がします。


 なので たまに 原点に返って 輝さんを 読んでみると 新たに 発見があったり 年齢とともに 変わってくる自分の価値観に気付いたり と さらに 深いところまで 感じることができたりします。








 この『にぎやかな天地』の主人公は 船木聖司という32歳の豪華限定本の製作を手掛けるフリーの編集者で クライアントから 日本の伝統的な発酵食品である 糠漬け、納豆、味噌、醤油、鰹節、酢を後世に伝えるための限定五百部の豪華本の製作を依頼されるところから 始まります。


 親友でカメランの桐原耕太、料理研究家として活躍している愛嬌があってユニークな丸山澄男と 仕事をしているうちに この仕事を職業にすべきかという 迷いが無くなり 自信に変わっていきました。


 7年前に亡くなった 最愛の祖母の隠された秘密、聖司が生まれる前に 不慮の事故で亡くなった父のこと、それらのことが 今生きている中に どういう風に かかわってくるのか 物語の面白さのキーになっています。


 登場人物は それぞれ 何かしら 悲しい経験をしていているにもかかわらず 淡々と前を向いて生きているのが 力強く 勇気を 与えてくれる 物語だと思います。


 そして 災厄による大きな悲しみが、年月を経て思いもよらない幸福や人と人との絆を 生み出します という宮本さんの言葉は すごく説得力があります。



 この物語も 輝さんの他の作品と同様に 難しくて 考えこまなければ いけないところはなく 早くページが 進みました。夢中になりすぎたおかげで 通勤途中 一駅乗り過ごして しまいました(笑)そして 読んでよかった!という満足感を 感じた 素晴らしい小説でした。


 最後に 講演会に 行った時の エピソードを 一つ。輝さんの小説には 登場人物が 数多くいますが その名前は どういう風にして 決めているのか?という質問に 輝さんは 色々な墓地に行き 墓石に 刻まれた 氏名を見て バランスが とれているなあ!とか 読み方の響きがいいなあ!とか あれこれと 模索した後 決定するそうです。なるほどなあ~

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