ちょこっと感動日記

毎日のちょっとした熱~い感動を綴るマイブーム日記。音楽、本、マラソン、映画、サッカーのこと あれこれ!

原田マハ<暗幕のゲルニカ>を読んで


 芸術は、飾りではない。敵に立ち向かうための武器なのだ! ― パブロ・ピカソ
原田マハさんの「暗幕のゲルニカ」という パブロ・ピカソの名画<ゲルニカ>にかかわるストーリーの小説を 読み終えました。ピカソの言葉が そっくりそのまま 表現されていて 約100年前も 現在にも 通用できる 必要な手段なんだという事が 分かった気がしました。  


  1937年にパリで描かれたゲルニカというモノクロの大画面の作品には 死んだ子供をを抱いて 泣き叫ぶ母親、折れた剣を握りしめて 生き途絶えた兵士、逃げ惑う女、両手をあげて 天を仰ぐ女、燃え上がる炎。兵隊も戦車も武器も 殺し合いも描かれていないが 紛れもなく 戦争を表現した地獄絵で 大概の人は 気味悪い感じがするのではないかと思います。好き好んでみる絵では ないんじゃないかなあ!と思ったりしました。この本を 読むまでは。



 舞台は 1937年のパリと2003年のニューヨークの二元の世界が 交互に 進んでいきます。1937年のパリは ピカソと その恋人ドラ・マール、のちのスペイン公爵のパルド・イグナシオが 登場します。スペインのゲルニカ地域を 空爆したナチス・ドイツのことを 新聞で知ったピカソは 激しい憤りを感じます。そこで 芸術家として 抵抗するために 描かれたのが 「ゲルニカ」だというわけです。この地獄絵は 反戦へのメッセージなのですね。


 一方 約70年後の2003年、ニューヨークで 同時多発テロが発生し そこで夫が犠牲になったMoMA(ニューヨーク近代美術館)のキュレーター、八神瑤子は <ピカソと戦争>という展示会を 企画して イラクに進攻しようとしているアメリカに対して メッセージを 全世界に送ろうと 企画しました。亡き夫のため 世界平和のために。そのためには 現在スペインの美術館レイナ・ソフィアにある「ゲルニカ」が どうしても 必要だという事で 無理を承知で 動き回ります。そこで 事件に 巻き込まれて行きます。


 このストーリーは ピカソが 本当に生きているかのように 自然に描かれている所も 魅力なのですが それにもまして それぞれに時代に 懸命に生きた2人の女性の生き方が 生き生きと 描かれていて 物語の核心になっている姿に 共感せずにはいられませんでした。懸命になって進んでいけば 必ず同じ思いをもった人が現れ 助けてくれ 不可能を 可能にしてしまう力みたいな不思議な運命みたいなものを 感じずには いられませんでした。 



 ピカソには オルガ・コクローヴァという妻がいて 愛人マリー・テレーズとその娘マヤがいます。その中での ドラ・マールは 写真家として そして恋人として ピカソを支えてました。ゲルニカの製作段階を 写真に収めることができたのは 彼女がいてこそなのです。またマリー・テレーズの明るいイメージとは違い「泣く女」のモデルとされているドラは たとえ醜い女に 描かれようが 心底ピカソのことが 好きだったんだなあ!と 思わせるところや 出会いから 別れまで 描かれているところは 作者の創造かと思いますが かっこええ!生き方に とてもいいなあ!と思いました。


  ↑ ドラ・マールが モデルとされている

                       「泣く女」


↓ 「マリーテレーズの肖像」 
   どちらも素晴らしいと思いますが 比較してみると 面白いですね。 



原田マハさんの本を読んだのは この本が最初ですが アートを絡めた作品「たゆたえども沈まず」 「楽園のカンヴァス」などがあり ぜひ読んでみたいなあと思いました。
アートを 物語に絡めてしまうのは 少しずるい気もしますが 参考文献を かなり使っていますし どの人物が実在か架空かを 記されている所に 作者の奥深さを感じますので 読者も より深く アートの世界に 入れるのではないかと思います。


素晴らしい本に 清々しさを 感じた一日でした。

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